豊かな緑に囲まれ、
過ごす。
リフォームで現れた
森の景色

森の家

札幌市北区・Iさん宅 夫婦40代

九州で暮らしていたIさん夫妻が40代にして移住を決意したのは、若い時から持ち続けていた北海道の大自然への憧れからでした。札幌に居を移して、土地や家を探すこと2年。ようやく見つけたのが、札幌市中央区にありながら、南向きの森の斜面に建つ築30年の中古住宅です。

「九州で住んでいたところは、どちらかというと畑が広がる里山の風景。こんな風に大木が立ち、森の中にいるような圧倒的な緑ではありません。だから完成した時は、リビングからの景色に感動しました」とご主人。

リフォームは、Iさんが九州時代からインターネットで見つけ惚れ込んでいたm+oの湊谷さんと大塚さんに託しました。まずは森ありき。それをどう家に取り込むかが最大のテーマとなったリフォームでは、森に面した壁一面を全面窓に。大胆に間取りを変更し、外せない梁や柱もあえて構造体を現しにして、経年経過した木材の風合いも森の景色の一部にしました。リビングの大窓だけでなく、寝室、キッチン、廊下の先の小窓に至るまで、すべての窓から緑が見え、本当に森の中で暮らしている錯覚にとらわれます。

「ここに住んでから、自分たちのライフスタイルがはっきりしました。朝日で起きて、沢のせせらぎや鳥の声を聞きながら、日々変化する森を眺め、自然と共に生きる。視界に入るものはすべて自分たちが好きなものばかりで、穏やかに過ごせるようになりました」と奥さん。

完成見学会にいらした前のオーナーの「ここにこんな風景があったんですね」という言葉に、森の魅力を引き出すリフォームの真価が見て取れます。何十年も前からそこにあり、人々を見つめてきた森が、Iさん夫妻に心豊かな暮らしを与えてくれました。

- 設計主旨 -

札幌市中央区山麓通りに面した緑地。そこより少し小高い場所にある、新しい家と古い家が混じりあいながら建っている自然に囲まれた住宅街。車がすれ違うのがやっとの幅の傾斜した道路、境界など無いのではないかと思うくらいの大きく育った木々に囲まれて、30年近く大切に住み続けられた家があった。

敷地は道路から少しずつ下に傾斜して緑地に行き着き、既存の玄関との高低差は50~60cm。内部はそのままLDKへと続き、外観は互い違いに掛け合う勾配屋根を持ったちょっといい形である。

九州から仕事で移り住んできたご夫婦は、大切な家族(ジャックラッセルテリア4匹)と一緒に暮らすために、自然に囲まれ緑を感じる生活ができそうなこの場所に住むことに決めた。そして、部分的に改修し、使える物を利用しながら自分たちの生活にあった空間をつくりたいと、築30年の住宅改修がはじまったのである。

二人の要望は、キッチンで料理をしているとき、食事をしているとき、本を読んだり映画を見ているとき、薪ストーブの火をぼうっと見ながら入ってくる景色……。室内のどこからも緑を感じられる大きな窓と開放的な空間、そしてみんなが外に出て直接自然に触れられる大きなテラスが欲しいこと。

そこで私たちは、この先も長く住めるようにと断熱・気密・窓改修・構造補強の全面改修工事をしつつ、既存の柱や梁などをさりげなく見せながら、間取りを大胆に変更することを考えた。

一番自然に関われる外壁面には念願の大きな窓を設けてリビングとし、ダイニング・キッチンへと奥につながる。その上部にはわずかな隙間を利用したロフト、リビングの隣には夫婦の寝室があり建物から大きく張り出したテラスへの出入りができる。そしてどの部屋からも緑が感じられるようになっている。いい形の外観には緑になじむように道産カラマツの羽目板を張った。

コストバランスを考えながら性能の改善と新たな空間をつくる大改修。素晴らしい景色と環境、施主との積み重なる対話があって実現した、かけがえのない緑豊かな空間になった。(文/湊谷 みち代)